交通事故紛争処理センター、本部での審査会(2005年6月)

新宿の高層ビルのひとつに交通事故紛争処理センターの本部がありますが、6月の中旬に そこで母のケースについての審査会が行われました。車に乗せ母を連れてゆきました。だいぶ 早くついたので都庁の展望台を見せてやりました。若いころ新宿で働いていたようでおじのいた 十二社(じゅうにそう)あたりを懐かしそうにながめていました。あそこの近くで温泉をやっている のがどうやらそのすじだそうです。近くの熊野神社は昔のとおり残っているようでした。審査会 では母の不自由になった日常のビデオを見せ、自賠責の後遺障害のとらえかたは一面的 でありもっとトータルに見る必要があることを訴えようと思いました。そうしてあまり容れられない なら母から買ってでも裁判にもちこんでやろうと心の内で決めていました。

審査室に通されるとテーブルを隔てて三名の審査員が座っていました。皆さんかなりの高齢 の方のようでした。こちら側は私と母、そして任意保険Z社のM氏が着席しています。母の件を 担当してきてくれた嘱託弁護士は向かって右の端、いわゆるお誕生日席に座っています。 テーブルの真ん中には「赤い本」だの紛セが毎年出す「交通事故裁定例集」がまるで審査員 とわれわれを隔てる壁のように積み上げてありました!あっけに取られていると審査員の一人 がやおら事故の様子や治療の様子だのをいちいち母に確認をしてゆきました。手術後のギブス 固定の有無だの、手術傷跡の長さだの、事故から何日たってからの手術だったか、抜糸した日、 リハビリ開始の日とその具体的様子(ほぐす、それもひざか足首か全体か、痛み止めは?)、 などなど。なんのための質問なのか一向に要領を得ません。単に相手に専門家であることを 印象付けようとしているのか、いろいろ聞いてあげ母を満足させようとしているのか。実際被害者 はこれらのことを親身になって聞いてくれる人は身内といえどもあまりいないです。さすがに 老練の審査員です、問いかけは穏やかなものでいたわりに満ちた響きがあります。しかしなんの ための質問か、この後の問答とは関係が無いようでした。冒頭はなんだか分からず主導権をとられた 感じです。この間、担当弁護士はいつものことらしくまたかというような雰囲気でじっとされていました。

このあと担当弁護士の裁定案に対し審査会としての判断を口頭で示してきました。先ほどの お爺さん(審査員)が主にしゃべるのですが傍らで電卓をはじく別の爺さんがところどころ口を はさんで詳細を教えてくれます。残りの爺さんは何も言いません。いわく、被害者当時72歳で あるが男子なら逸失利益はゼロであるが(なんたる時代錯誤!)、女性の家事は認める。全年齢 平均を取るのは理論上不可能である(どんな理論か聞かせてもらいたいもんだ!)。なので 65歳以上の賃金平均でやるべき、と先ほどの同情に満ちた母に対する言い方から今度は交渉の 代理人たる私に決め付けてきました(おい、ジジイ、いきなり態度豹変しんてじゃねーぞ、こら!、 それとも本領発揮かい?!)。より高齢(えっ、何歳より「より高齢」?)ならさらに0.7倍(この倍率の根拠は?) して賃金を調整したZ保険会社の掛け率は当然である。だが、母の場合は大変な労働を考え 減額は無しにしたい。入院中は100%の損害とし、通院は期間が5ヶ月以上と長いので前半は 70%の損害とし後半はリハビリも進み40%とみる。 ということで審査会の休業損害算定は担当弁護士の裁定案より 7万ほど下がりました。ま、細部は議論の余地おおありですが金額に大差はでないところなので 一応だまって聞いときました。しかし内心、議論する気がうせてきます。70%だの40%だのなんの 根拠も示されないさじ加減のようですので。そんな積み上げは今までの事例の積み上げから 来てるのでしょうか。まやかし(は言い過ぎ、なら気休め)の積み上げ出ないことを祈ります。

私はかなりこっぴどい感想を述べていますが、問題の難しさにそうするのも仕方が無いのかと 感じてもいます。しかし絶対おかしいのは自賠責の認定は不完全なのにそれだけで逸失利益 を決めてしまうやり方です。ここは譲りたくないところでした。しかしながらその壁は破れません。 お爺さんがいわく、交通事故の一律公平な賠償のためにパターン化されますから14級は労働能力 損失は5%が5年間認められます、だと。”一律公平な賠償のため”?こんなのウソです。 本来は事故による受傷は千差万別、それからくる障害も千差万別。だから公平な賠償は個々の 障害をそれなりの基準にてらし評価してできることです。それを一律段階的にパターン化するのは 不公平な賠償です。しかしそれがまかり通っているのは件数が多くて処理しきれない、だからそう するんだというのが本当の理由でしょう。”一律公平な賠償のため”というのは表向きの見せ掛けの インチキに過ぎません。

その他、慰謝料も14級で大体の基準があるとのことで、これは担当弁護士と同じく「赤い本」 の110万をさしていました。家族交通費は14級10号(神経症状)では認めないとのこと。なぜ認め ないのかは聞きもしませんでしたが、言いもしませんでした。

ここで反撃ですが、もうなんか無駄なような気が禁じえませんでした。母の日常生活の不自由を 持参のノートパソコンに入れてきて見せようとしたのですがお爺さんたちは見るに及ばないという。 じゃあCDに焼いてきたから提出しようとしましたがそれも不要と言下に断ってきました。念のために ビデオの内容を写真入れてまとめた家屋改造見取り図付の文書も用意してきたのですが、さすが に文書については3人の審査員は読んで見ましょうと受け取りました。ここで母と私は一度退室しました。

20分ほどして呼ばれましたので再度入室すると、提出した資料は分かりやすくて良くかけている とほめられました。しかし資料に記載して訴えたような「実損害は公平を期すため賠償されません」 とはっきりと宣言されてしまいました。しかしいろいろと家の中の不自由もあるので手すりをつける 家屋改造費は新たに認めましょうとのこと。後遺障害の維持、悪化防止のリハビリについては ここでもこの程度の障害では認めないとのことでした。私はもうこうまでしてもダメなので引け際か と思い始めました。裁判して母をあと最低でも1年以上は悩ますのがかわいそうにも思えてきました。 母と互いに相談しここで妥協をすることにした訳です。

午後2時過ぎに始まった審査会はこうして午後3時半過ぎにはすべて終わっていました。 それから三日後には入金が任意保険会社からありました。

まとめ
後日、紛センからアンケートが送られてきましたが、そこに記入したことを記してまとめとさせて いただきます。
「ADRとしての貴センターを高く評価いたします。費用がかかりませんでしたが、被害者側 からもいくらかは取っていただいてもよいのではないでしょうか。その上で一律公平のための パターン化を見直していただき裁判により近い、しかしスピーディなところはそのままで、個々の 事案により即した示談なり裁定をお願いしたいと思います。今回は14級のケースでしたが上位 等級では裁判とせざるを得ないと思いました。大変お世話になりました。今後もよりよいADRとして のご発展をお祈りいたします。

しかし裁判といえども裁判官や弁護士によりけりで、どっちがいいのか分からないです。しかし 14級程度でも今のところより事案に即した判定をもらえる可能性が多いのは裁判のほうでしょう。

付記:14級ならこの程度の審査なのでしょうか。もっと上位等級なら認めていただく範囲も広がるのか。 私には分かりません。なので紛センを利用させていただくのと並行によい弁護士探しをして裁判も 視野にいれて進めてゆくのがいいと思っています。これは被害者の方の価値判断にもよりますので よく考えて自分で賠償交渉を進めてください。





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